少子化対策と働き方改革の一環として、男性の育児休業取得促進は企業にとって重要な課題です。
しかし、文化的なハードルや業務体制の不備により、男性育休の取得率は依然として低水準にあります。
こうした状況を改善するため、厚生労働省は「両立支援等助成金」のなかで「出生時両立支援コース」を設け、中小企業が男性従業員の育児休業取得を支援する取り組みに対して助成金を支給しています。
本制度は、企業の雇用環境整備を促進し、従業員のワークライフバランス向上と人材定着を目指すものです。
両立支援等助成金 出生時両立支援コース
出生時両立支援コースは、男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を取得しやすい環境を整備した中小企業に対して助成金を支給する制度です。
目的は、男性育休取得率の向上と、企業における両立支援の文化醸成です。
本助成金は、企業が行う雇用環境整備や業務体制整備の取り組みと、実際の育児休業取得実績に応じて支給され、男性の育児取得率が上昇した場合に助成するものです。
【支給対象事業主】
中小企業のみが対象です。
なお、中小企業の定義は業種ごとに異なり、以下の基準を満たす必要があります。
業種:資本金の額または出資の総額、または常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む):5,000万円以下または50人以下
サービス業:5,000万円以下または100人以下
卸売業:1億円以下または100人以下
その他の業種:3億円以下または300人以下
【概要】
以下の2つの場合に助成金が支給されます。
第1種:男性が育児休業を取得しやすい「雇用環境整備」「業務体制整備」に取り組み、子の出生後8週間以内に開始する連続5日間以上の育児休業を取得した男性労働者が出た場合
第2種:男性労働者の育児休業取得率の数値(%)が1事業年度で30ポイント以上上昇し、50%を達成した(または一定の場合に2年連続70%以上となった)場合
【支給要件】
第1種
(1)育児・介護休業法等に定める雇用環境整備の措置について、必要な数の措置を実施していること
(2)育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること
(3)男性労働者が、子の出生後8週間以内に開始する育児休業を取得すること
(4)育児休業制度などを労働協約または就業規則に定めていること
(5)次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局へ届けていること
(6)対象の男性労働者を育児休業の開始日から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として継続して雇用していること
※(1)、(4)および(2)のうち規程等の策定は、(3)の育児休業開始日の前日までに行なっている必要があります。
《第2種》男性の育児休業取得率の上昇等
(1)育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行なっていること
(2)育児休業取得者の業務を代替する労働者の、業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること
(3)下記のAまたはBに該当すること
A.男性労働者の育児休業取得率が、前事業年度から30ポイント以上上昇し、50%以上となっていること
B.男性労働者の育児休業取得率が、2カ年連続して70%以上となること
(4)育児休業制度などを労働協約または就業規則に定めていること
(5)次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局へ届けていること
(6)対象の男性労働者を育児休業の開始日から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として継続して雇用していること
【支給額】
第1種<男性労働者の育児休業取得>
1人目:20万円 ※雇用環境整備措置を4つ以上実施した場合、30万円
2人目・3人目:10万円
第2種<男性の育児休業取得率の上昇等>
申請年度の前年度を基準として30ポイント以上上昇し、50%以上となった場合等:60万円
※申請時にプラチナくるみん認定事業主であれば15万円加算
育児休業等に関する情報公表加算:2万円
※第1種(1〜3人目のいずれか)、または第2種のいずれか1回限り加算
注意事項
・同一事業主について、第1種は3人目まで、第2種は1回限りの支給です。
・第2種の受給後に第1種の申請を行うことはできません。
・令和3年度以前の出生前育児支援コース(男性労働者の育児休業・育児目的休暇)を受給している事業主であっても、新たに支給要件を満たした場合には申請可能です。
【申請期限】
第1種
申請に係る育児休業の終了日の翌日から起算して2カ月以内
第2種
申請に係る事業年度(育児休業取得率が上昇等した事業年度)の翌事業年度の開始日から起算して6カ月以内
第2種の経過措置について
第1種を申請した事業年度の末日が令和5年12月17日よりも前であり、男性の育児休業取得率が50%を達成している場合は、令和6年12月17日改正前の規定で申請することができます。
【おわりに】
近年、男性の育休取得率は年々向上していますが、大企業と比較すると中小企業の取得率は依然として低い状況です。
中小企業にとって出生時両立支援コースは、男性育休取得を促進するための重要な助成制度です。
企業にとっては、助成金の受給だけでなく、職場環境改善や柔軟な働き方ができることによる人材定着という長期的なメリットがあります。
本制度を活用し、育児と仕事の両立を支える職場文化を醸成し、優れた人材の確保・定着につなげてみませんか。
社会保険の資格喪失手続きや離職票の準備など、従業員の退職に際して、会社が対応すべき手続きは多岐にわたります。
そのなかでも税務で重要な手続きの一つが「源泉徴収票」の交付です。
企業は、退職した従業員に対して、その年の1月1日から退職日までに支払った給与や賞与、源泉徴収した所得税の額などを記載した源泉徴収票を必ず発行し、交付しなければなりません。
法律で定められた企業の義務でもある『退職者への源泉徴収票の交付』について解説します。
源泉徴収票を交付しないと罰則の可能性も
退職者への源泉徴収票の交付は、所得税法第226条第1項によって定められた給与支払者(=会社)の法的義務です。
原則として、この交付義務は正社員だけではなく、パートやアルバイトであっても、給与を支払った従業員が退職した場合には発生します。
退職者は多くの場合、次の転職先で年末調整を受けるか、あるいは自身で確定申告を行うことになります。
その際、退職した会社から受け取った給与額や、すでに納めた所得税額を証明する書類として、この源泉徴収票が必要になります。
退職者にとっては非常に重要な書類の一つである源泉徴収票ですが、会社側が正当な理由なく交付しないと、所得税法第242条に基づき、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性もあります。
意図的に事実と異なる内容を記載して交付したり、期限内に交付しなかったりした場合にも、同様に罰せられる可能性があるので注意してください。
特に交付期限は、日常の業務に追われるなかで見落とされがちなポイントです。
在職中の従業員への源泉徴収票の交付は翌年の1月31日までが期限ですが、退職者の場合「退職の日以後1カ月以内」と短いため注意が必要です。
源泉徴収票の交付までの具体的なプロセス
発行手続きは、退職者の最終給与が確定した時点で作業を開始します。
まず、退職が決定したら、その従業員の退職日を正確に把握しましょう。
そして、その年の1月1日から退職日までに支払った給与・賞与の総額、差し引いた社会保険料の合計額、さらに源泉徴収した所得税の合計額を正確に集計・確定させます。
この時、注意したいのが「年末調整」の扱いです。
年の途中で退職する従業員については、原則として会社は年末調整を行いません。
そのため、源泉徴収票の「年末調整未済」といった欄に印がつくことになります。
必要な数字がすべて確定したら、「給与所得の源泉徴収票」を作成します。
基本的には、給与計算ソフトや会計ソフトを利用して自動的に作成するケースがほとんどですが、年の途中で給与改定があったり、特殊な手当があったりする場合は、手動で確認する必要があります。
作成が完了したら、退職者本人へ交付します。
期限は前述の通り「退職の日以後1カ月以内」です。
最終出社日に手渡しできるのが理想的ですが、最終給与の計算が間に合わない場合も多いので、その際は後日郵送することになります。
もしくは、本人の同意があれば、電子メールの添付など、電磁的方法による交付も認められています。
源泉徴収票の発行の際によくあるミスと対策
退職者への源泉徴収票発行業務は、慣れているつもりでも意外な落とし穴があります。
よくあるミスは、記載内容の誤りです。
特に、支払総額や源泉徴収税額、社会保険料の控除額といった数字の間違いは、退職者の転職先での年末調整や確定申告に迷惑をかけることになります。
たとえば、中途入社だった従業員が退職する際に、前職分の源泉徴収票の内容まで誤って合算して記載してしまう、といったケースもあります。
自社が支払った金額のみを正確に記載しなければなりません。
ミスを防ぐためには、給与計算ソフトの出力結果だけを鵜呑みにせず、担当者による確認はもちろん、可能であれば別の担当者によるダブルチェック、もしくは税理士に最終確認を依頼するのも一つの手です。
また、「すでに退職した人」という意識からか、手続きが後回しにされ、気づいた時には交付期限を過ぎていた、あるいは退職時に確認した住所が間違っており、郵便物が返送されてしまうケースも少なくありません。
退職手続きのチェックリストに「源泉徴収票の作成・送付」を組み込み、誰がいつまでに対応するかを明確にするようにしましょう。
住所確認は退職時の面談などで必ず行い、その記録をしっかり残しておき、記録が残る方法で郵送することでミスを防ぐことができます。
退職者への源泉徴収票の交付は、企業の重要な責務です。
「退職後1カ月以内」という期限を守り、支払った給与や徴収した税額を正確に記載した書類を、確実に本人の手元に届けましょう。