税理士法人 斎藤会計事務所

東京都杉並区阿佐谷北1-3-8 グリーンパークビル2階

TEL: 03-5356-7301

FAX: 03-5356-7302

トップ 事務所案内 事業内容 お役立ち情報 お問合せ




新しく事業を始めるなら『中小企業新事業進出補助金』を検討しよう

新規事業を考えている事業者を後押しする「中小企業新事業進出補助金」が2025年よりスタートしました。

この制度は、今までの事業とは異なる新しい分野へ進出したい中小企業を支援する目的で新設されました。

最大9,000万円もの補助を受けられる可能性があるため、これまでの補助金制度と比較しても、非常に手厚い内容となっています。

すでに第1回の公募は終了しているものの、年内や翌年初頭に第2回以降の公募が行われる見込みです。

制度の詳しい中身や補助を受けるための要件について、解説します。

新しい事業分野に進出する中小企業を支援

「中小企業新事業進出補助金」の特徴は、単に企業の資金繰りを助けるだけでなく、企業の『変革』と『成長』を促すことに主眼が置かれていることです。

たとえば、新しい製品やサービスを開発したり、これまでにないビジネスモデルを構築したり、あるいは自社の技術やノウハウを新たな分野に応用したりするなど、企業の多様な新事業進出を支援する制度となっています。

対象となる事業は幅広く、製造業の企業がサービス業に進出したり、IT企業が農業分野に参入したりといった、これまでの自社の事業とは一線を画すような大胆な挑戦も対象になります。

ただし、注意したいのは、その挑戦が「新事業進出」でなければならないという点です。

たとえば、既存の製品の製造量を増やしたり、製造方法を変えたりといったケースは、新事業進出には該当しません。

補助の対象となる経費も多岐にわたります。

新規事業に必要な機械装置の導入費はもちろん、システムの構築費、外部専門家へのコンサルティング費、新たな事業展開に向けた研究開発費、新規事業に必要な広告宣伝費なども含まれます。

これにより企業は資金的な制約を受けることなく、より質の高い事業展開に注力できるようになります。

また、この補助金の下限金額は750万円で、上限は従業員数に応じて決まります。

従業員数20人以下であれば2,500万円、後述する「大幅賃上げ特例」の適用を受けると3,000万円まで補助を受けることができます。

また、従業員数21〜50人は4,000万円、特例適用で5,000万円、従業員数51〜100人は5,500万円、特例適用で7,000万円、そして、従業員数101人以上であれば7,000万円、特例適用で最大9,000万円まで補助を受けることが可能です。

補助金を受けるために必要な要件

前述した通り、補助金を受けるための要件には、新事業進出であることが重要になります。

本助成金の新事業進出に該当するのは、以下の「新事業進出要件」をいずれも満たす場合です。

【新事業進出要件】

(1)製品などの新規性要件 顧客に提供するものが、事業を行う企業にとって新しい製品やサービスであること。

(2)市場の新規性要件 既存の事業では参入していなかった、新たな市場であること。

(3)新事業売上高要件 以下のいずれかを満たすこと。

(A)事業計画期間最終年度において、新事業の売上高または付加価値額が、応募申請時の総売上高の10分の1または総付加価値額の100分の15以上を占めることが見込まれること。

(B)応募申請時の直近の事業年度の決算に基づく売上高が10億円以上で、かつ同事業年度の決算に基づく売上高のうち、新事業の売上高が3億円以上である場合には、事業計画期間最終年度において、新事業の売上高または付加価値額が、応募申請時の当該事業部門の売上高の10分の1または付加価値額の100分の15以上を占めることが見込まれること。

そして、この「新事業進出要件」のほかにも、以下の要件を満たすことで、はじめて補助の対象となります。

【付加価値額要件】

補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、付加価値額(または従業員一人当たり付加価値額)の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みがあること。

【賃上げ要件】

補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、以下のいずれかの水準以上の賃上げを行うこと。

(A)従業員一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、管轄の都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させること。

(B)給与支給総額の年平均成長率を2.5%以上増加させること。

※どちらも達成できない場合は、補助金を返還する必要があります。

【事業場内最賃水準要件】

補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、事業場内最低賃金を毎年、管轄の都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準とすること。

【ワークライフバランス要件】

次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること。

※計画は、仕事と家庭の両立を支援する専門ポータルサイト「両立支援のひろば」で公表します。

【金融機関要件】

補助事業の実施にあたって金融機関などから資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関から事業計画の確認を受けていること。

さらに、以下の「賃上げ特例要件」を満たすと、受け取れる補助金額が増えます。

【賃上げ特例要件】

補助事業実施期間内に、以下の要件をいずれも満たすこと。

(A)給与支給総額を年平均6.0%以上増加させること。
(B)事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げること。

補助金を受け取るには、これらの要件を満たしたうえで、事業計画を策定し、事務局に申請する必要があります。

その後、事務局の審査を経て、採択されれば補助金が支給されます。

新規事業への進出を考えているのであれば、補助金の申請や事業計画策定の経験が豊富な専門家に相談することをおすすめします。


9月 - September 2025

1日[月] 仏滅
2日[火] 大安
3日[水] 赤口
4日[木] 先勝
5日[金] 友引
6日[土] 先負
7日[日] 仏滅
8日[月] 大安
9日[火] 赤口
10日[水] 先勝
11日[木] 友引
12日[金] 先負
13日[土] 仏滅
14日[日] 大安
15日[月] 赤口
16日[火] 先勝
17日[水] 友引
18日[木] 先負
19日[金] 仏滅
20日[土] 大安
21日[日] 赤口
22日[月] 友引
23日[火] 先負
24日[水] 仏滅
25日[木] 大安
26日[金] 赤口
27日[土] 先勝
28日[日] 友引
29日[月] 先負
30日[火] 仏滅
【長月(ながつき)】
  ●誕生石:サファイア,アイオライト

政府も後押し!『ジョブ型人事指針』の中身とジョブ型雇用の注意点

2024年8月28日に、内閣官房は「ジョブ型人事指針」を公表しました。

この指針では、ジョブ型人事制度を導入している先進的な20社の具体的な事例を紹介しており、これから導入を検討する企業にとって、非常に実践的な手引きとなるものです。

指針の公表は、ジョブ型人事制度への関心が高まっているなかで、その流れをさらに加速させるものとみられています。

一方で、ジョブ型人事に抵抗感を持つ企業も少なくありません。

今回は、ジョブ型人事指針が公表された理由や、ジョブ型人事制度のメリットとデメリットなどを解説します。

「ジョブ型人事指針」が公表された背景

内閣官房が2024年8月28日に公表した「ジョブ型人事指針」は、新しい資本主義実現会議「三位一体労働市場改革分科会」が中心となって策定したものです。

この指針の最大の特徴は、抽象的な概念の説明に留まらず、実際にジョブ型人事制度を導入し、成果を上げている20社の具体的な事例が豊富に盛り込まれている点にあります。

事例は、大企業から中小企業まで、さまざまな業種・規模の企業を網羅しており、各社がどのような課題を抱え、ジョブ型人事制度をどのように設計し、運用しているかが詳細に紹介されています。

具体的には、職務記述書の作成方法、評価制度の見直し、報酬体系の設計、人材育成の考え方など、ジョブ型人事制度を導入するうえで直面するさまざまな課題に対して、具体的な解決策や成功事例が提示されています。

たとえば、ある企業では、各職務に求められるスキルや経験を明確に定義した職務記述書を作成し、それを採用や配置、評価の基準として活用している事例が紹介されています。

また別の企業では、職務等級制度を導入し、職務の難易度や重要度に応じて報酬を決定することで、より公平で透明性の高い評価制度を構築しています。

この指針は、ジョブ型人事制度への移行を考えている企業が、個別の事情に合わせて制度を設計できるよう、多様な選択肢とヒントを提供することを目指しています。

いわば、ジョブ型人事制度を導入するための『羅針盤』のような役割を果たすものといえるでしょう。

では、なぜ政府はこのジョブ型人事指針を公表したのでしょうか。

その背景には、日本企業が抱える構造的な課題があります。

長らく続いてきた年功序列や終身雇用といった制度は、高度経済成長期には安定した雇用を生み出し、企業の成長に貢献してきました。

しかし、グローバル化の進展や国際競争の激化、技術革新などによって環境が大きく変わったことにより、企業はより迅速に市場の変化に対応し、イノベーションを生み出すことが求められるようになりました。

このような状況下で、従来の雇用制度は、従業員の専門性を高めにくい、成果へのインセンティブが働きにくいといった課題を抱えています。

特に、デジタル化の波が押し寄せる現代において、従来のメンバーシップ型では、特定の専門スキルを持った人材を適材適所で配置し、最大限に能力を発揮させるのがむずかしいという実情がありました。

政府は、この指針を通じて、企業が個々の職務に求められる専門性やスキルを明確にし、それに見合った人材を配置・育成するジョブ型人事への移行を促すことで、企業全体の生産性向上と競争力強化を目指しています。

ジョブ型人事のメリットとデメリット

ジョブ型人事制度を導入する際は、メリットとデメリットを把握しておくことが重要です。

メリットとしては、各職務の役割と責任が明確になるため、従業員は自分の職務に集中しやすくなる点です。

これにより、無駄な業務が減り、効率的に仕事を進めることができるため、結果として組織全体の生産性向上につながります。

また、職務内容が明確になることで、企業は必要なスキルや経験を持つ人材をピンポイントで採用し、最適な職務に配置することが可能になります。

従業員自身も専門性を高めるべき方向性が明確になるため、計画的にスキルアップを図り、より高度な専門職として成長していくことができます。

一方、デメリットとしては、ゼネラリストの育成がむずかしくなる可能性があげられます。

職務が明確化されることで、従業員が自身の専門外の業務を経験する機会が減り、幅広い知識や経験を持つゼネラリストが育ちにくくなるかもしれません。

これは、将来の幹部候補の育成において課題となる場合があります。

また、部署間の連携がしづらくなる可能性があります。

職務範囲が明確になることで、自分の担当範囲以外の業務に積極的に関わろうとしなくなり、部署間の情報共有ができない状態である「サイロ化」が生じるリスクがあります。

組織がサイロ化してしまうと部署間の連携が希薄になり、組織全体のパフォーマンスが低下するかもしれません。

ほかにも、制度設計と運用の複雑さや、従業員の意識改革が困難になるなどの課題も考えられます。

このようなメリットとデメリットを十分に理解したうえで、検討することが大切です。

もし、導入する場合は、指針の事例を参考にしながら、自社の状況に合わせた制度の設計を進めていきましょう。