少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化するなか、企業が持続的に成長するためには、即戦力となる外部人材の確保や、多様な経験を持つ中途採用者の活用が不可欠です。
しかし、中途採用には募集や選考、採用後の環境整備などに一定のコストがかかり、二の足を踏む中小企業も少なくありません。
本助成金は、一定期間内に中途採用率を向上させた企業に対し、雇用管理制度の整備や賃金上昇などの要件の達成状況、その後の定着状況に応じた助成を行うことで、企業の労働力確保と労働者の円滑な労働移動を後押ししています。
早期再就職支援等助成金
「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」は、中途採用(中高年齢者等の採用を含む)の拡大を図るため、中途採用計画を届け出て、実際に中途採用者の雇用割合を一定以上増加させたほか、雇い入れた中途採用者の賃金を引き上げた事業主を助成する制度です。
本助成金は、企業の採用コストの負担を軽減するだけでなく、これまで新卒採用や既存の採用ルートに頼っていた企業に対し、中途採用という新たな人材確保の選択肢を促す狙いがあります。
【支給対象事業主】
以下の要件を満たす事業主が対象となります。
(1)雇用保険の適用事業主であること
(2)支給のための審査に協力すること
(3)申請期間内に申請を行うこと
(4)支給対象者に対する賃金を支払期日までに支払っていること
(5)事業所において、出勤簿、賃金台帳、労働者名簿等の書類を整備、保管していること
(6)中途採用計画の提出の日の前日から起算して6カ月前の日から支給申請書の提出日までの間(基準期間)に、事業主都合によって解雇等(退職勧奨を含む)していないこと
(7)基準期間に、雇用保険法第23条第1項に規定する「特定受給資格者」となる離職理由のうち、離職区分1Aまたは3Aとされる離職理由により離職したとして雇用保険失業給付の手続きをとられた方の数が、中途採用計画の提出日における雇用保険被保険者数に対して6%を超えていないこと。
ただし、基準期間に特定受給資格者として手続きをとられた方の数が3人以下の場合は、この要件は適用しません。
(8)本コースの申請を行おうとする事業所が、中途採用計画期間の初日の前日から起算して1年前の日において雇用保険適用事業所であること
(9)常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主の場合、中途採用計画提出時点において、中途採用により雇い入れられた者の割合を求職者が容易に閲覧できるかたちで公表していること
【支給対象労働者】
以下の要件を満たす労働者が対象となります。
(1)申請事業主に中途採用により雇い入れられた労働者であること
(2)雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れられた労働者であること
(3)期間の定めのない労働者(パートタイムを除く)として雇い入れられた労働者であること
(4)雇い入れ日の前日から起算してその日以前1年間に、雇用関係、出向、派遣、請負または委任により当該事業主の事業所で就労したことがない労働者であること
(5)雇い入れ日の前日から起算してその日以前1年間に、申請事業主と密接な関係にある事業主に雇用されていた経験がない労働者であること
【支給要件】
計画の実施後に以下の主要な要件を達成する必要があります。
(1)中途採用計画を策定し、助成金の支給要件を満たすことの確認を求めるための各種申請書類を管轄の労働局へ提出していること
(2)中途採用計画期間中に採用した支給対象者を、支給決定日までに事業主都合により解雇等(退職勧奨を含む)していないこと
(3)中途採用計画期間中の中途採用率について、以下のいずれかを満たすこと
・中途採用計画期間の前年同期と比較して、中途採用率を5ポイント以上上昇させること
・中途採用計画期間中の中途採用率が50%以上であること(計画期間が1年間である場合に限る)
(4)支給対象者のうち、雇い入れ日から起算して6カ月を経過する日までに離職した方の割合が20%未満であること
(5)対象労働者の雇い入れ前事業所において支払われていた賃金と、雇い入れ後6カ月間の賃金支払日ごとに支払われる賃金とを比較して、いずれも5%以上上昇させたこと
【支給額】
(1)通常助成:支給対象者1人につき20万円
ただし、支給申請日前に離職した者、および賃金上昇要件(5%以上アップ)を満たさない者は除く。
(2)成長要件加算:支給対象者1人につき10万円追加
通常助成の要件を満たしたうえで、「ローカルベンチマークの財務分析結果(総合評価点)がB以上であること」または「支給申請日の属する年度から遡って直近2年度を比較し、給与等受給者1人当たりの平均受給額を5%以上上昇させていること」のいずれかに該当する事業所の事業主が雇い入れた場合。
※いずれも1事業所1年度あたり20人まで。
【まとめ】
本コースは、単なる採用費用の補填ではなく、「即戦力人材が定着し、活躍できる仕組みづくり」を目指す企業にこそ活用してほしい制度です。
「中途採用を増やしたいが、新卒主体の体制だったため受け入れの評価・処遇制度に不安がある」、「せっかく採用した経験者が待遇面などを理由に早期離職してしまうのを防ぎたい」、「魅力的な賃金条件を提示して、他社に負けない採用力を身につけたい」といった課題を抱える企業にとって、本助成金の受給を機とした社内体制のアップデートは、企業の採用力や生産性を抜本的に強化し、持続的な成長へとつなげる強力な一歩となるでしょう。
新入社員が入社して数カ月が経ち、職場に馴染んできたこの時期に警戒しなければならないのが情報漏洩です。
2026年4月には、SNSを通じて社内の機密情報が意図せず拡散されるトラブルが全国で相次ぎました。
日常となったSNSへの投稿が、企業の根幹を揺るがす事態に発展するケースも増えています。
こうした新入社員による情報漏洩を防ぐには、実効性の高い「情報セキュリティ教育」が欠かせません。
新入社員を情報漏洩の当事者にさせないために、情報セキュリティ教育の重要性や進め方などを解説します。
新入社員による情報漏洩の現状と背景
新卒採用で入社した新入社員たちが研修を終えて現場に配属され、7月を迎える頃にはおよそ3カ月が経過します。
この時期は、仕事の流れを覚え、周囲との人間関係も構築され、職場に対する「慣れ」が生じるタイミングです。
しかし、慣れは同時に「気の緩み」を引き起こしやすく、特に情報管理における隙が生まれやすい時期でもあります。
2026年4月には、新入社員によるSNSへの悪意のない「情報流出事件」が散見されました。
XやInstagramのストーリーズのほか、写真・動画共有アプリのBeRealなど、『今』を共有するSNSを通じて、本来は社外に出すべきではない情報が次々と流出しました。
投稿された内容には、社内資料や自身の社員証、会議中のホワイトボードやPC画面に映り込んだ顧客情報なども含まれていました。
SNSのなかでも、BeReal自体は日常の何気ない風景を切り取って共有するアプリであり、投稿自体に悪意がないことがほとんどです。
しかし、「ありのままの自分」を友人らに伝えたいという欲求が、結果として機密情報の流出につながってしまいました。
拡散された情報は完全に消去することがむずかしく、企業はブランドイメージの毀損や謝罪対応に追われることになりました。
情報漏洩が企業にもたらすリスク
情報漏洩には、流出した情報の悪用による実害はもちろん、信頼の失墜という大きなリスクもあります。
管理体制の甘さが露呈することで、既存の顧客や取引先は離れていき、新規のビジネスチャンスも失われることになります。
また、事故対応のために経営層や現場のスタッフが膨大な時間を割かなければならず、本来の業務が停滞することによる機会損失も無視できません。
こうしたリスクから会社と社員を守るために必要なのが「情報セキュリティ教育」です。
この教育の目的は、従業員一人ひとりが、なぜその情報が重要なのか、もし漏洩したらどのような影響があるのかを想像できるリテラシーを育むことにあります。
外部からのサイバー攻撃やウイルス感染を防ぐための技術的な知識も重要ですが、現代の情報セキュリティ教育において、より比重を高めるべきなのは、社員のSNSリテラシーの向上です。
特に、デジタルネイティブ世代に対しては、「公私の境界線」を明確に意識させる必要があります。
自分のスマートフォンで撮影した写真が、会社に重大なダメージを与える可能性があることを伝えるのも、一つのポイントです。
効果のある情報セキュリティ教育を行うには
情報セキュリティ教育は企業の規模や業態に合わせて、効果的な方法を選ぶ必要があります。
多くの企業で導入されているのは、時間や場所を選ばずに受講できる「eラーニング」の活用です。
動画やクイズ形式を取り入れることで、退屈になりがちなセキュリティ学習を自分事としてとらえさせることができます。
より深い理解を促すためには、講師によるオンラインでの集合研修や外部セミナーへの参加も効果的です。
特に、実際に起きた漏洩事件のケーススタディを行い、グループワークで「自分たちならどう防げたか」を議論させるプロセスは、知識を定着させるためにも有効です。
また、こうした教育を成功させるポイントは、一度きりで終わらせないことです。
セキュリティの脅威は日々進化しており、新しいアプリやサービスが登場するたびに新しいリスクが生まれます。
定期的なフォローアップ研修を行い、常に最新の情報をアップデートし続ける体制を整えることが、自社に合った強固なセキュリティ文化を醸成することにつながります。
情報漏洩の原因を紐解くと、近年はサイバー攻撃やウイルス感染といった外部要因が目立つ一方、誤操作や管理不足、そしてSNSへの不適切な投稿といった人的なミスである内部要因も、依然として大きな割合を占めています。
SNSが生活の一部となり、誰もが発信者になれる現代において、情報漏洩のリスクはかつてないほど高まっています。
情報セキュリティ教育は、企業と社員の安全を守るための施策でもあります。
危機感を共有しながら、組織全体でこの課題に取り組んでいきましょう。