武田憲二税理士事務所

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社会保険適用促進支援で年収の壁を意識せずに働ける環境づくりを

有期雇用労働者などが新たに社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象となったとき、労働者の手取り収入を減らさないように「社会保険適用促進手当」の支給などの取り組みを行なった事業主に、労働者一人当たり最大50万円が助成されます。

いわゆる『年収106万の壁』への対応策として、2023年10月20日から開始されたこの『キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)』について説明します。

社会保険適用時処遇改善コース

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者に対し、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成するものです。今回の新設コースを含め、現在7つのコースがあります。

2024年10月には社会保険の適用拡大が予定されていますが、労働者のなかには、保険料負担が生じるとその分、手取り収入が減少するため、これを回避する目的で労働時間を調整する人がいます。

短時間労働者への社会保険の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するための『社会保険適用促進手当』を支給するほか、所定労働時間を延長させたり基本給等の増額を行なったりといった取り組みを支援するために、この『社会保険適用時処遇改善コース』が新設されました。

支給要件など本助成金の概要は以下の通りです。

【支給対象事業主】

対象となる事業主に求められる代表的な要件は下記の通りです。

●労働者負担分の社会保険料額以上の額を、手当または基本給として新たに支給し、総支給額を15%以上増額させる事業主

●対象労働者の週所定労働時間を4時間以上延長する、または週所定労働時間を1時間以上4時間未満延長するとともに基本給を増額して、新たに社会保険に加入させる事業主   など

【支給対象労働者】

6カ月以上継続雇用されており、2023年10月1日〜2026年3月31日の間に新たに社会保険に加入した有期雇用労働者等が対象(同事業所内で過去2年以内に社会保険に加入した場合は対象外)   など

【主な支給要件】

●新たに社会保険に加入した有期雇用労働者等に、各支給対象期間中に継続して雇用し、基本給および定額で支給されている諸手当を減額させずに支給すること

●特定適用事業所もしくは任意特定適用事業所であること

●対象労働者は、社会保険の適用日の前日から起算して過去6カ月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であって、かつ支給対象事業主の事業所において過去2年以内に社会保険に加入していなかった者であること   など

【支給額】

支給額の設定は『手当等支給』と『労働時間延長』の二つに分かれており、併用させることも可能です。

(1)手当等支給メニュー
事業主が労働者に社会保険を適用させる際に、『社会保険適用促進手当』の支給等により労働者の収入を増加させる場合に助成します。

<1年目>
一人当たり助成額:6カ月ごとに10万円×2回(大企業は7.5万円×2回)
要件:(1)賃金(標準報酬月額・標準賞与額)の15%以上分を労働者に追加支給すること(社会保険適用促進手当など)

<2年目>
一人当たり助成額:6カ月ごとに10万円×2回(大企業は7.5万円×2回)
要件:(2)賃金の15%以上分を労働者に追加支給する(社会保険適用促進手当など)とともに、3年目以降、以下(3)の取り組みが行われること

<3年目> 一人当たり助成額:6カ月で10万円(大企業は7.5万円)
要件:(3)賃金(基本給)の18%以上を増額させていること(労働時間の延長との組み合わせも可能)

(2)労働時間延長メニュー
所定労働時間の延長により社会保険を適用させる場合に事業主に対して助成を行うものです。
以下のいずれかの取り組みを行なった場合に、支給されます。

一人当たり助成額:6カ月で30万円(大企業は22.5万円)

要件:
1 週所定労働時間の延長 4時間以上+賃金の増額 なし
2 週所定労働時間の延長 3時間以上4時間未満+賃金の増額 5%以上
3 週所定労働時間の延長 2時間以上3時間未満+賃金の増額 10%以上
4 週所定労働時間の延長 1時間以上2時間未満+賃金の増額 15%以上

※そのほか、併用メニューもあります。

【受給までの流れ(例)】

(1)事前準備を行う
●対象労働者の働き方の希望を把握し、仕事内容や処遇などについて話し合う面談を実施
●助成金による支援メニューを活用しながら解決策を検討
●併せて社会保険制度の概要や加入のメリットについて、対象労働者に周知

(2)キャリアアップ計画書を作成・提出する

(3)就業規則等を整備する

(4)対象労働者に社会保険を適用する

(5)対象労働者に手当を支給開始、または労働時間延長・賃上げの取り組みを実施する

(6)指定期間の取り組み後、2カ月以内に書類申請を行う

このほかにも細かい支給要件や必要な書類などがあります。詳細は厚生労働省ホームページをご確認ください。


人事評価の公平性を保つための『評価会議』の進め方

従業員の等級や報酬に大きな影響を及ぼす人事評価には、公平性や納得性が求められます。

人事評価は、評価者があらかじめ定められた『評価基準』に沿って行うものですが、人間が査定する以上、どうしても評価にはブレが生じてしまいます。

しかし、この評価のブレは従業員の不満の要因となるため、可能な限り取り除かなければいけません。

そこで重要になってくるのが、評価者が一堂に会して行われる『評価会議』です。

評価者による評価を調整し、最終決定を下す評価会議について、全体的な流れやポイントを説明します。

まずは評価会議を行う目的を理解する

組織によって人事評価の方法はさまざまですが、一定以上の規模の企業になると、評価の公平性を保つために、二人以上の評価者が査定を行うのが一般的です。

なかでも、係長や課長クラスが「1次評価者」として直属の部下の査定を行い、その上の各部署の部長クラスが「2次評価者」として、1次評価者の評価が正しく公平だったのかを確認する「2段階の人事評価」が多くの企業で行われています。

1次評価者は普段から部下と直接関与しているため、その部下の能力や働きぶり、仕事への姿勢などを把握することができますが、一方で距離が近すぎるがゆえに、正しい評価や判断ができない場合もあります。

そこで2次評価者は、より客観的な視点で1次評価者の見解に偏りがないか見極める役割を担います。

そして、1次評価者と2次評価者が下した評価を、さらに公平性を持って調整していくのが、『評価会議』です。

企業によって、評価会議は「評価調整会議」や「キャリブレーション」ともいわれています。 評価会議を経た評価は、対象従業員の最終的な評価となります。

また、評価会議には、被評価者の最終評価を決めるほかに、もう一つの目的があります。

それは、評価者の評価の軸となる『評価基準』を、ほかの評価者の基準とすり合わせ、揃えるというものです。

人事評価に用いられる評価基準には、ノルマの達成度合いや業績など、数字として示すことができる項目と、個人の能力や仕事への姿勢など、数値化のむずかしい項目があります。

数値化のむずかしい項目は、評価者の主観による評価になることも多く、どうしてもバラつきやブレが生じてしまいがちです。

評価会議は、こうしたバラつきやブレをなくすために、評価者の持つ評価基準を全員で共有し、揃えていく場でもあります。

評価基準のすり合わせをしておけば、数値化がむずかしい項目でも1次評価の段階で、より公平性が高く、納得感のある評価を下せることになります。

滞りなくスムーズに評価会議を進めるために

評価会議の参加者や進め方は企業によってさまざまで、役員が中心となって行われるケースもあれば、1次評価者が加わるケースもあります。

一般的に、従業員数が50名規模の企業であれば、1次評価者と2次評価者を加えた8〜10名の評価者による評価会議が望ましいとされています。

会議の時間は、規模や人事評価に対する考え方にもよりますが、50名規模であれば、3〜6時間くらいを目処に設定しましょう。

1次評価者でもある係長や課長自身の評価が必要な場合は、評価会議を一部と二部で分け、一部で一般従業員に対する評価会議を行い、二部では係長や課長に席を外してもらったうえで、係長や課長の評価者である部長クラスが評価会議を行います。

評価会議を進める際は、被評価者の評価結果を一覧にした評価表を用意し、評価を比較できるようにしておくとスムーズです。

その評価表をもとに、1次評価者や2次評価者がその評価を下した理由を説明し、それぞれの項目ごとに意見を出し合いながら、検証していきます。

評価の争点になりやすいのは「不自然に高い評価や低い評価」「1次評価者と2次評価者の間で乖離のある評価」「同部署や同業務の従業員同士にもかかわらず乖離している評価」などです。

円滑に評価会議を進めるためには、進行役の役割も重要です。 事前に予定表を作って参加者に共有し、滞りなく進めるようにしなければいけません。

また、会議ではディスカッションを経て最終評価が決まるため、活発な意見交換が行われるよう参加者に発言してもらうことを意識しておきましょう。

自社の従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上に、人事評価は重要です。

その人事評価に納得感と満足感を得られるようにするためにも、しっかりと意見をすり合わせ、調整する評価会議を執り行うようにしましょう。